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胃に関するお悩み

「焼き魚を食べた後に胃がキリキリ…」もしかしてアニサキス症!?

胃に関するお悩み
「焼き魚を食べた後に胃がキリキリ…」もしかしてアニサキス症!?
院長 柏木 宏幸院長 柏木 宏幸

院長 柏木 宏幸所属学会・資格

  • 日本内科学会 総合内科専門医
  • 日本内科学会 内科認定医
  • 日本消化器病学会 消化器病専門医
  • 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
  • 一般社団法人日本病院総合診療医学会
    認定病院総合診療医
  • 難病指定医
  • がん診療に関わる医師に対する緩和ケア 研修会 修了
  • PEG・在宅医療研究会 修了証

「焼き魚を食べた後に、急に胃がキリキリと痛くなった…」「食後数時間で吐き気がしてきた…」こんな症状が現れた場合、もしかするとアニサキス症の可能性があります。アニサキスとは、魚介類に寄生する寄生虫の一種で、人間が感染すると激しい胃痛や嘔吐を引き起こします。一般的に、生の魚(刺身や寿司)を食べたときに感染すると考えられがちですが、焼き魚や煮魚でもアニサキス症になることがあるため注意が必要です。「加熱しているのにアニサキスが生き残ることがあるの?」と疑問に思うかもしれませんが、不十分な加熱や魚の内部に入り込んだアニサキスが生存していた場合、感染のリスクがあるのです。

この記事では、アニサキス症の原因や症状、治療法、予防策について詳しく解説し、安全に魚を楽しむための知識をお伝えします。

アニサキスとは?魚に寄生する危険な寄生虫

アニサキス(Anisakis)は、魚やイカなどの海産物に寄生する線虫(寄生虫)です。アニサキスの幼虫は、長さ2〜3cm、幅0.5〜1mm程度の白っぽい細い糸のような形をしており、魚の内臓や筋肉に潜んでいます。

アニサキスの寄生は特に以下の魚で多く確認されています。

  • サバ(特に〆サバなどの生食で感染リスクが高い)
  • アジ(刺身やたたきで食べることが多いため注意が必要)
  • イワシ(生や軽く火を通したものは危険)
  • サケ(天然のものは特にアニサキスが寄生しやすい)
  • サンマ(内臓に寄生していることが多い)
  • イカ(特にスルメイカはリスクが高い)

もし本来、アニサキスは海の生物の体内で成長し、人間は終宿主ではないため、体内に入ると長期間生存することはありません。しかし、誤って摂取すると胃や腸壁に食いつき、激しい痛みを引き起こすことがあるのです。


アニサキス症とは?感染するとどうなるのか

アニサキス症とは、アニサキスの幼虫が人間の胃や腸の壁に侵入し、強い炎症を引き起こす病気です。アニサキス自体は人間の体内では長く生存できず、数日で死滅しますが、それまでの間に胃壁や腸壁に食い込み、激しい痛みや不快感をもたらします。

アニサキス症には、胃アニサキス症と腸アニサキス症の2種類があります。

①胃アニサキス症

胃アニサキス症は、感染例のほとんどを占めるタイプで、魚を食べてから数時間以内に発症します。胃に侵入したアニサキスが胃壁に食いつくことで、キリキリと刺すような痛み、吐き気、嘔吐が起こります。症状が重い場合は、胃のけいれんを引き起こし、食事ができなくなることもあります。

②腸アニサキス症

腸アニサキス症は、比較的まれですが、感染すると強い腹痛を伴うことがあります。食べてから10〜24時間後に発症し、腸に侵入したアニサキスが炎症を起こすことで、腸閉塞のような症状を引き起こします。胃アニサキス症と異なり、診断が難しく、入院治療が必要になることもあります。

アニサキス症の症状は、急激に発症することが特徴です。通常、食中毒の多くは発症までに半日〜数日かかることが多いのに対し、アニサキス症は食後1〜8時間以内に突然発症するため、食後すぐに胃痛が起こった場合は、アニサキス症を疑う必要があります。


焼き魚を食べたのになぜ?アニサキスが生き残る理由

「アニサキスは加熱に弱いはずなのに、なぜ焼き魚を食べた後でも感染するのか?」と疑問に思う人もいるでしょう。一般的に、アニサキスは70℃以上の加熱で即死し、60℃でも1分間の加熱で死滅すると言われています。しかし、焼き魚でもアニサキスが生き残るケースがあるのです。

その理由として、魚の内部まで十分に加熱されていない可能性が考えられます。アニサキスは、通常は魚の内臓に寄生していますが、魚が死ぬと筋肉へ移動することがあります。そのため、外側はしっかり焼けていても、内側が生焼けだとアニサキスが生存している可能性があるのです。特に、次のような焼き方ではリスクが高まります。

アニサキスに注意が必要な焼き方

  • 魚の表面のみを焼いた状態(炙り焼き、軽い焼き加減)
  • 分厚い魚を短時間だけ焼いた場合
  • 焼きが甘い状態で提供されたものを食べた場合
また、一度焼いた魚を冷蔵保存し、再加熱が不十分だった場合も、アニサキスが生き残ることがあります。しっかり火が通っているように見えても、中心部まで十分な温度で加熱されていなければ、アニサキス症に感染するリスクがあるのです。

アニサキス症の主な症状!胃痛以外のサインにも注意

アニサキス症に感染すると、多くの人がまず「胃がキリキリと痛む」「吐き気がする」といった症状を訴えます。しかし、症状は胃痛だけではなく、さまざまな不調を引き起こすことがあるため注意が必要です。

①食後数時間で発症する強烈な胃痛

アニサキスが胃壁に侵入すると、突き刺さるような激しい痛みが起こる。

②吐き気・嘔吐

胃の炎症がひどくなると、胃が異常収縮し、吐き気や嘔吐が伴うことがある。

③お腹の張りや膨満感

胃の動きが低下し、消化不良のような感覚になる。

④腸アニサキス症の場合、強い腹痛や下痢

腸に侵入したアニサキスが炎症を起こすと、腸閉塞のような痛みを引き起こすことがある。

アニサキス症は、通常24〜48時間以内に症状のピークを迎えますが、アニサキスが胃壁や腸壁に食い込んでいる限り、強い痛みが続くことがあります。そのため、症状が出たら自己判断せず、すぐに医療機関を受診することが重要です。

アニサキス症と食中毒の違い!見分け方のポイント

アニサキス症は、細菌やウイルスによる一般的な食中毒とは異なる特徴があります。特に、発症時間や症状の違いを知っておくことで、適切な対応がしやすくなります。

アニサキス症と一般的な食中毒の違い
項目 アニサキス症 一般的な食中毒(サルモネラ・ノロウイルスなど)
発症時期 食後1~8時間以内 6~48時間後
主な症状 激しい胃痛、嘔吐、腸閉塞のような痛み 下痢、発熱、嘔吐
原因 アニサキス幼虫や胃壁が腸壁に食い込む 最近・ウイルスが腸内で増殖
発熱 なし(まれに微熱) あり(高熱になることも)

アニサキス症の特徴

アニサキス症は、食後数時間以内に急激な痛みが起こることが特徴で、特にキリキリとした胃痛が強く、発熱を伴わないことが多いという点で、一般的な食中毒とは異なります。また、アニサキス症は細菌やウイルスではなく、寄生虫による感染のため、抗生物質は効果がなく、内服加療を行い自然に排出されるまで待つか、内視鏡で取り除く処置が必要です。


アニサキス症の発症までの時間!いつ症状が出るのか

アニサキス症は、魚を食べた直後に症状が出るわけではなく、一定の時間が経過してから発症します。そのため、食後しばらくしてから突然の強い胃痛や吐き気に襲われることが多く、「何が原因なのか分からない」と戸惑うこともあります。

発症までの時間の目安

  • 胃アニサキス症:魚を食べてから1〜8時間以内に発症し、突然の胃痛や吐き気を伴う。
  • 腸アニサキス症:食後10〜24時間後に発症し、腸閉塞のような激しい腹痛を引き起こ
    す。

胃アニサキス症の場合は、食後1〜2時間程度でキリキリとした強い痛みが現れることが多く、食事内容を思い返すことで原因に気づくことができることもあります。一方で、腸アニサキス症は発症までに時間がかかるため、「単なる腹痛かもしれない」と自己判断してしまい、病院の受診が遅れるケースもあるので注意が必要です。

特に、食後に強い胃痛があり、数時間経っても改善しない場合は、アニサキス症の可能性が高いため、速やかに消化器内科を受診することが重要です。


アニサキス症になったらどうする?対処法と治療法

アニサキス症を発症した場合、自己判断で対処するのではなく、病院で適切な処置を受けることが重要です。特に、症状が強い場合は、早急に医療機関を受診し、適切な治療を受ける必要があります。

医療機関での治療方法

①内視鏡による摘出

胃アニサキス症の場合、内視鏡(胃カメラ)を使って直接アニサキスを摘出することが最も効果的です。これにより、即座に痛みが改善されます。

②鎮痛剤や胃薬の処方

アニサキスが自然に死滅するのを待つ場合、鎮痛剤や胃の炎症を抑える薬、アレルギーの薬を使用して症状を和らげることがあります。ただし、市販の胃薬(胃酸を抑えるタイプ)は、アニサキスの排除を遅らせる可能性があるため、自己判断で服用しないようにしましょう。

③腸アニサキス症は経過観察が基本

腸に侵入したアニサキスは、内視鏡での摘出が難しいため、自然に死滅するのを待つことになります。しかし、腸閉塞のような症状が出た場合は、手術が必要になる場合もあるため、腹痛が続く場合は必ず医師の診察を受けることが重要です。

④やってはいけないこと

  • 無理に吐こうとする → 胃を刺激すると症状が悪化する可能性がある
  • 強いお酒を飲んで殺そうとする → アニサキスは胃酸に耐えるため、アルコールで死ぬことはない
  • 放置して様子を見る → 痛みが強い場合は早急に医療機関を受診することが重要

アニサキス症は、適切な治療を受けることで早期に改善できる病気です。「もしかして?」と思ったら、早めに病院を受診しましょう。


アニサキス症の予防策!安全に魚を食べるためのポイント

アニサキス症を防ぐためには、魚の取り扱いや調理方法に注意することが大切です。魚を美味しく安全に食べるために、以下のポイントを押さえておきましょう。

アニサキス症を防ぐための基本ルール

①魚の内臓はできるだけ早く取り除く

アニサキスは通常、魚の内臓に寄生しています。しかし、魚が死ぬと筋肉へ移動することがあるため、新鮮なうちに内臓を処理することが重要です。

②しっかり加熱する

60℃で1分以上、70℃以上で即死するため、加熱処理が最も確実な予防法です。焼き魚の場合は、中心部までしっかり火が通っているか確認しましょう。

③冷凍処理を行う

-20℃で24時間以上冷凍すればアニサキスは死滅します。生で食べる場合は、冷凍処理されたものを選びましょう。

④目視でチェックする

アニサキスは白く細長い糸のような形をしているため、調理前に目視で確認することが重要です。特に、刺身や寿司を作る場合は、透かして光を当てながらチェックすると見つけやすくなります。

酢・ワサビ・塩ではアニサキスは死なない!

「酢でしめたら大丈夫」「ワサビをつければ平気」と思っている人も多いですが、酢やワサビ、塩ではアニサキスを完全に殺すことはできません。特に、〆サバや塩辛などは感染リスクがあるため、事前の冷凍処理が重要です。


アニサキス症の発症までの時間!いつ症状が出るのか

アニサキス症は、魚を食べた直後に発症するわけではなく、一定の時間が経過してから症状が現れるのが特徴です。そのため、食後しばらくしてから突然の胃痛や吐き気に襲われることが多く、「食べ物が原因とは思わなかった」というケースも少なくありません。

発症までの時間の目安

①胃アニサキス症:食後1〜8時間以内に発症し、胃の激痛や吐き気を引き起こす。
②腸アニサキス症:食後10〜24時間後に発症し、腸閉塞のような強い腹痛を伴う。

胃アニサキス症は、魚を食べて数時間後に突如として激しい胃痛が起こるのが特徴で、食中毒よりも発症が早いことが多いです。一方、腸アニサキス症は発症までに時間がかかり、最初は軽い違和感から始まり、次第に強い痛みへと変化していくことが多いため、単なる消化不良と誤認されやすいです。

特に、食後に胃がキリキリと痛み出し、時間が経っても改善しない場合は、アニサキス症の可能性が高いため、速やかに医療機関を受診することが重要です。


アニサキス症のリスクが高くなる行動とは?

アニサキス症は誰でも感染する可能性がありますが、特にリスクが高い人が存在します。日常的な食習慣や体質によって、発症しやすい人とそうでない人がいるのです。

アニサキス症のリスクが高くなる特徴

①生魚を頻繁に食べる人

刺身や寿司、漬け魚、軽く炙った魚を好む人は、アニサキスに触れる機会が多くなり、感染リスクが上がります。

②新鮮な魚であれば大丈夫と考えてしまう

「新鮮な魚なら安全」と思い込み、適切な処理をせずに食べると、アニサキス症のリスクが高まります。鮮度が良くても、アニサキスが寄生している場合があるため、適切な処理が必要です。

③胃腸が弱い人・免疫力が低い場合

胃や腸に疾患がある人は、アニサキスによるダメージが大きくなり、症状が重くなりやすい傾向があります。

④調理の際のチェックが甘い場合

「魚は目視で確認すれば大丈夫」と思っている人もいますが、アニサキスは身の中に潜んでいることもあるため、冷凍や加熱の処理が不可欠です。


アニサキス症は人から人に感染するのか?

アニサキス症は、人から人へ感染することはありません。感染経路は、アニサキスが寄生した魚介類を食べることに限られています。

アニサキス症は食事由来の寄生虫感染症

アニサキスは、体内で繁殖するわけではなく、胃や腸に侵入して一時的に炎症を起こすことが問題になります。人間の体内では生存できる期間が限られており、数日〜1週間程度で死滅します。感染した人が他人にうつすことはないため、同じ食事をしなければ家族や周囲の人への感染は心配不要です。
しかし、一緒に食事をした人が同じ魚を食べていれば、複数人が同時にアニサキス症を発症する可能性があるため、症状が出た際は周囲の人にも注意を促すことが大切です。

「焼き魚を食べた後に胃がキリキリ…」と感じたら、それは単なる胃もたれではなく、アニサキス症の可能性があることを知っておく必要があります。アニサキスは、十分に加熱されていない魚に潜んでいることがあり、焼き魚であっても感染するケースがあるのです。

安全に魚を楽しむためのポイント
  • 魚の内臓はできるだけ早く処理する(内臓から筋肉へ移動する前に除去)
  • 加熱する際は中心までしっかり火を通す(70℃以上で瞬時に死滅)
  • 生で食べる場合は、冷凍処理されたものを選ぶ(-20℃で24時間冷凍すると死滅)
  • 目視でアニサキスがいないか確認する(白い糸状の寄生虫をチェック)
  • 食後に強い胃痛があればすぐに医療機関を受診する(内視鏡で取り除くのが最も確実な治療法)

アニサキス症は、適切な知識と対策を持っていれば確実に防げる疾患です。魚の美味しさを安全に楽しむために、リスクを知り、正しい処理や調理方法を実践することが大切です。「焼き魚なら安全」と油断せず、しっかりと火を通す、または冷凍処理を行うことで、アニサキス症のリスクをゼロにしましょう!


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当院では、アニサキス症かもしれないとご不安の方にもしっかりと診察と検査を行います。場合によっては、内視鏡検査のご提案もいたします。アニサキス症が疑われる場合や胃カメラを当日希望の方は、胃カメラの検査を直接Webでご予約頂くことも可能です。(胃カメラを予約せずに外来のみをご予約頂いた場合、当日の内視鏡の予約状況によりかなりお待ちいただく可能性がございます)24時間web予約が可能です。

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診療科目 消化器内科、内視鏡内科、内科