「寝る前に甘いものを食べると胃がもたれる…」これって胃弱体質?

院長 柏木 宏幸所属学会・資格
- 日本内科学会 総合内科専門医
- 日本内科学会 内科認定医
- 日本消化器病学会 消化器病専門医
- 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
- 一般社団法人日本病院総合診療医学会
認定病院総合診療医 - 難病指定医
- がん診療に関わる医師に対する緩和ケア 研修会 修了
- PEG・在宅医療研究会 修了証
「夜、ついつい甘いものが食べたくなる」「寝る前にチョコレートやアイスを食べるのが習慣」という人は多いかもしれません。しかし、その後に胃がもたれる、気持ち悪くなる、消化が悪いと感じることはないでしょうか? こうした症状が頻繁に起こる場合、「胃弱体質」の可能性があると考えられます。特に、寝る前に甘いものを食べると、翌朝に胃の不快感を感じることが多いのはなぜでしょうか? それは、消化の仕組みや胃の働き、さらには食べ物がもたらす影響が関係しているからです。夜間は胃腸の働きが低下しやすく、特に糖分が多い食品は消化に時間がかかるため、胃に負担をかけやすくなります。また、甘いものには脂肪分を多く含むものが多いため、これが胃の不調を引き起こす原因になることもあります。
本記事では、「寝る前に甘いものを食べると胃がもたれるのはなぜか?」について、医学的な視点から詳しく解説します。さらに、胃弱体質とはどのような状態なのか、そして胃もたれを防ぐための対策についてもお伝えします。
胃もたれとは?その仕組みと症状
「胃もたれ」とは、胃の消化機能が低下し、食べたものが胃に長時間残ることで起こる症状です。通常、食べたものは胃酸と消化酵素によって分解され、適切な時間内に小腸へ送られます。しかし、消化機能が低下すると、胃の中に食べ物が停滞し、胃が重たく感じたり、不快感を覚えたりするのです。
胃もたれの主な症状

・胃(上腹部)が張った感じがする
・胃の中が重く、不快感がある
・ゲップが増える
・胸やけや吐き気を感じる
・食欲が低下する
これらの症状が頻繁に起こる場合、単なる「食べすぎ」ではなく、胃の機能が低下している可能性があります。特に寝る前に甘いものを食べた後にこれらの症状を感じる場合、胃が正常に働いていない可能性があるのです。
寝る前の甘いものが胃に与える影響
寝る前に甘いものを食べると、なぜ胃もたれが起こるのでしょうか? その理由は、主に以下の3つの要因が関係しています。
①胃の消化機能の低下
夜間は副交感神経が優位になり、体は休息モードに入ります。このとき、胃の消化機能も昼間より低下するため、食べたものがスムーズに消化されにくくなります。特に糖分を多く含む甘いものは消化に時間がかかるため、胃の中に長く滞留し、胃もたれの原因となるのです。
②胃酸の分泌異常
甘いものを食べると、胃酸の分泌が促進されます。通常、胃酸は食べ物の消化を助ける働きを持っていますが、寝る前に糖分を摂ることで胃酸が過剰に分泌されると、胃の粘膜を刺激し、逆流性食道炎や胸やけを引き起こすことがあります。
③血糖値の急上昇と胃の動きの鈍化
甘いものは血糖値を急激に上昇させますが、その後インスリンの働きによって急激に血糖値が下がります。この血糖値の乱高下は、胃の動きをコントロールする自律神経のバランスを崩し、胃の働きを鈍らせる原因になります。その結果、消化がうまく進まず、胃もたれや不快感につながるのです。
胃弱体質とは?胃がもたれやすい人の特徴
「胃弱体質」とは、胃の働きが弱く、食べ物の消化が遅かったり、胃のトラブルを頻繁に起こしやすい体質のことを指します。これは遺伝的な要因だけでなく、生活習慣や食事の内容によっても影響を受けます。
胃弱体質の特徴
・少し食べただけで満腹感を感じる
・食後に胃が重く感じることが多い
・油っこいものや甘いものを食べると胃がもたれやすい
・ストレスを感じると胃痛が起こる
・冷たいものを摂取すると胃の調子が悪くなる
特に、ストレスや疲労が溜まっていると、自律神経のバランスが崩れ、胃の働きがさらに低下することがあります。これにより、食べ物の消化がうまく進まず、胃もたれや胃痛を引き起こしやすくなります。
また、胃弱体質の人は、胃の粘膜が敏感なことが多いため、甘いものや脂肪分の多い食べ物に対して過剰に反応しやすいのも特徴です。特に、寝る前に甘いものを食べると、胃の負担が増して翌朝の胃もたれにつながりやすくなります。
胃もたれを防ぐための対策
寝る前に甘いものを食べることで胃もたれを感じる場合、以下のような対策をとることで症状を軽減できます。
①寝る2時間前までに食事を終える
胃の消化には時間がかかるため、少なくとも寝る2時間前までに食事を済ませることが理想的です。甘いものを食べる場合も、就寝直前ではなく、夕食後のデザートとして早めに食べるようにすると、胃への負担を軽減できます。
②消化に優しい食べ物を選ぶ
胃が弱い人は、高脂肪・高糖質なものではなく、消化しやすい食品を選ぶことが重要です。例えば、アイスクリームやチョコレートの代わりに、果物やヨーグルトなどを選ぶと、胃もたれを予防しやすくなります。
③ストレス管理を行う
ストレスは胃の働きを低下させる大きな要因です。リラックスする時間を確保し、睡眠の質を向上させることで、胃の機能を正常に保つことができます。
④軽い運動を取り入れる
食後すぐに寝ると、胃の消化が遅くなりやすいため、軽いストレッチや散歩をすることで、胃腸の動きを促進することができます。
胃もたれを予防するための食習慣とおすすめの食材
寝る前の甘いものが胃もたれを引き起こす原因を理解した上で、日頃の食習慣を見直すことが大切です。特に、胃の負担を減らすためには、食事の内容や食べ方に気を付けることが重要です。ここでは、胃もたれを予防するための具体的な食習慣と、胃に優しい食材を紹介します。
胃に優しい食材の例
・炭水化物:お粥、うどん、白ごはん(雑穀米は胃の負担になることもあるため注意)
・タンパク質:豆腐、鶏ささみ、白身魚、半熟卵
・野菜:キャベツ、人参、大根(加熱すると消化しやすくなる)
・果物:バナナ、りんご(酸味が強い柑橘類は控えめに)
・発酵食品:ヨーグルト、納豆、ぬか漬け
甘いものを食べるならタイミングを工夫する

どうしても甘いものを食べたくなる場合、食べる時間帯を工夫することで、胃の負担を減らすことができます。 例えば、寝る直前ではなく、夕食のデザートとして食べることで、胃が活動している間に消化が進み、もたれにくくなります。
また、食後に甘いものを食べると血糖値の急上昇を防ぐことができるため、糖分の代謝がスムーズに行われやすくなります。一方で、空腹時に甘いものを食べると、胃酸の分泌が過剰になり、胃に負担をかけることがあります。
食べ方を意識する
同じ食べ物でも、食べ方次第で胃への負担が大きく変わります。以下のポイントを意識することで、胃もたれを予防しやすくなります。
・ゆっくりよく噛んで食べる(胃の消化を助ける)
・食べる量を調整する(一度に大量に食べない)
・温かい飲み物と一緒に摂る(消化を助ける)
・寝る直前に食べない(最低でも就寝2時間前までに食事を済ませる)
特に、冷たい甘いもの(アイスクリームや冷えたチョコレートなど)は胃の働きを低下させやすいため、できるだけ常温のものや温かいものを選ぶようにすると良いでしょう。
胃弱体質を改善するための生活習慣
「胃がもたれやすい」「少し食べただけで胃が重くなる」といった症状が続く場合、単に食べ物だけでなく、生活習慣全体を見直すことも重要です。胃の働きを改善するために、日常生活で意識すべきポイントを紹介します。
①ストレス管理を徹底する

ストレスは、胃の働きを大きく低下させる要因の一つです。自律神経が乱れると、胃酸の分泌が過剰になったり、逆に少なくなったりするため、胃の不調が起こりやすくなります。ストレスを軽減するために、以下のような習慣を取り入れることをおすすめします。
・適度な運動をする(ウォーキングやヨガなど)
・深呼吸や瞑想を取り入れる(副交感神経を活性化する)
・趣味やリラックスタイムを確保する(ストレス解消につながる)
・睡眠の質を向上させる(十分な休息をとることで胃腸の働きを整える)
②睡眠環境を整える
寝る前に甘いものを食べて胃もたれが起こる原因の一つに、睡眠時の姿勢も関係しています。横になると、胃の中の食べ物が逆流しやすくなり、胃酸の影響を受けやすくなります。胃もたれを防ぐために、以下のポイントを意識しましょう。
・食後すぐに横にならない(最低でも30分~1時間は座っている)
・寝るときは少し上体を高くする(クッションや枕を使って角度をつける)
・右側を下にして寝るのを避ける(胃の形状的に、左側を下にすると消化がスムーズになる)
③食事のリズムを整える

胃の健康を維持するためには、毎日規則正しい時間に食事をとることが重要です。特に、朝食を抜くと胃酸が過剰に分泌され、胃の粘膜が傷つきやすくなるため、必ず軽くでも食べるようにしましょう。また、1日3食をバランスよくとることが理想ですが、胃が弱い人は1回の食事量を減らし、1日4~5回に分けて食べる「分食」を取り入れるのも効果的です。
砂糖の摂取が胃に与える影響:胃酸分泌と消化の関係
糖の摂取
砂糖を多く含む甘いものは、胃にどのような影響を与えるのでしょうか? 砂糖の摂取は、胃酸の分泌を促進する一方で、胃の粘膜に負担をかける可能性があります。特に、精製された白砂糖は血糖値を急激に上昇させるため、インスリンの分泌を過剰に促し、胃の働きをコントロールする自律神経のバランスを崩す原因になります。その結果、胃酸の分泌が不安定になり、胃もたれや胸やけを引き起こすことがあります。
糖分は胃もたれの原因に
また、糖分が多い食品は、胃の消化に時間がかかることが多く、特に寝る前に摂取すると、胃の中に未消化の食べ物が残りやすくなります。これが胃もたれや不快感の原因となるのです。さらに、砂糖の過剰摂取は腸内環境を悪化させることもあり、腸内でのガスの発生や膨満感につながることもあります。
このように、砂糖が胃にもたらす影響は単なる「カロリーの摂りすぎ」にとどまらず、胃の消化機能全体に悪影響を及ぼす可能性があるのです。
高脂肪な甘いものが胃もたれを引き起こす理由
甘いものの中でも、特に「高脂肪・高糖質」な食品(チョコレート、アイスクリーム、ケーキ、ドーナツなど)は、胃もたれを引き起こしやすいことが知られています。その理由の一つは、脂肪の消化には時間がかかるためです。脂肪分は胃の蠕動運動(ぜんどううんどう)を抑制する働きがあり、胃の中に長くとどまりやすくなります。通常、炭水化物やたんぱく質は比較的短時間で小腸へ移動しますが、脂肪分が多い食事は胃に長く留まり、消化が遅れることで胃もたれの原因となります。
胃酸の分泌を促進
脂肪の多い食品は胃酸の分泌を促進し、胃の粘膜を刺激する可能性があります。特に、胃弱体質の人はこの影響を受けやすく、チョコレートやクリームを多く含むケーキを食べると、翌朝に胃の不快感を感じることが多くなります。甘いものを食べる場合は、脂肪分が少ないものを選び、できるだけナッツやフルーツなどの自然な糖分を含む食品を選ぶことで、胃もたれのリスクを減らすことができます。
寝る前の甘い飲み物も胃もたれの原因に?
甘いものを食べるだけでなく、甘い飲み物(砂糖入りのコーヒー、紅茶、ジュース、ミルクティー、ココアなど)も胃もたれを引き起こす可能性があります。特に、カフェインと糖分が組み合わさった飲み物は、胃酸の分泌を促進し、胃の粘膜を刺激することがあります。例えば、寝る前に砂糖入りのコーヒーや紅茶を飲むと、胃酸の分泌が増加し、逆流性食道炎や胃もたれの原因になることがあります。
また、甘い乳製品(例えば、ココアやミルクティー)は、脂肪分も含まれているため、消化に時間がかかりやすく、寝る前に飲むと胃の中で長時間停滞しやすくなります。その結果、朝起きたときに胃が重く感じることがあるのです。寝る前に温かい飲み物を摂る場合は、砂糖を控えたハーブティーや白湯などを選ぶと、胃の負担を減らすことができます。
砂糖依存と胃の健康:甘いものがやめられない人への対策
甘いものを食べると、一時的に気分が良くなります。これは、糖分が脳内の「セロトニン」や「ドーパミン」といった幸福感をもたらす神経伝達物質を分泌させるためです。しかし、甘いものを頻繁に摂取することで「砂糖依存」に陥ることがあり、それが胃の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。
砂糖依存の影響とは?

甘いものを食べることで血糖値が急上昇し、その後急降下するため、空腹感が強まり、さらに甘いものを欲してしまいます。その結果、胃酸の分泌が乱れ、胃の働きが鈍くなります。さらに甘いものを食べる頻度が増えると、胃に負担がかかり続けてしまいます。
砂糖依存を防ぐための方法
・甘いものを自然な糖分に置き換える(フルーツやハチミツなどを活用)
・血糖値を安定させる食事をとる(食物繊維・たんぱく質をしっかり摂る)
・カフェインやストレスによる過剰な糖分摂取を防ぐ(リラックスする時間を持つ)
特に、寝る前に甘いものが食べたくなる人は、「本当に空腹なのか、それとも習慣的に食べたくなっているのか」を考えることが大切です。甘いものを控えるだけで、胃もたれの症状が改善されることも多いので、少しずつ意識してみましょう。
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