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便に関するお悩み

「お酒を飲むと翌朝トイレが大変…」腸が悲鳴を上げているサインかも?

便に関するお悩み
「お酒を飲むと翌朝トイレが大変…」腸が悲鳴を上げているサインかも?
院長 柏木 宏幸院長 柏木 宏幸

院長 柏木 宏幸所属学会・資格

  • 日本内科学会 総合内科専門医
  • 日本内科学会 内科認定医
  • 日本消化器病学会 消化器病専門医
  • 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
  • 一般社団法人日本病院総合診療医学会
    認定病院総合診療医
  • 難病指定医
  • がん診療に関わる医師に対する緩和ケア 研修会 修了
  • PEG・在宅医療研究会 修了証

楽しい飲み会の翌朝、トイレに駆け込むことになった経験はありませんか?「お酒を飲むと翌朝お腹がゆるくなる」「下痢が止まらない」「腸がギュルギュルと音を立てる」といった症状は、多くの人が経験しています。これは、アルコールが腸の働きを乱し、腸粘膜や腸内環境にダメージを与えている可能性があるのです。お酒を飲むことで腸が刺激され、ぜん動運動が活発になりすぎると、便が水っぽくなり下痢を引き起こすことがあります。また、アルコールの分解過程で発生する「アセトアルデヒド」や「脱水症状」も、腸に悪影響を及ぼします。

特に、お酒を飲むたびに翌朝トイレに困るような場合は、腸が悲鳴を上げているサインかもしれません。この記事では、アルコールが腸に与える影響と、その対策について詳しく解説していきます。

アルコールが腸に与える影響とは?

胃への影響

お酒を飲むと腸が普段とは違う動きをするのは、アルコールが腸の機能に直接影響を与えるからです。アルコールは消化器官を刺激し、胃や腸の働きを活発にしたり、逆に乱したりする作用があります。

腸への影響

アルコールは腸内の粘膜を刺激し、炎症を引き起こすこともあります。飲酒後にお腹が痛くなったり、腸が張ったりするのは、腸の粘膜がダメージを受けている証拠です。この状態が続くと、腸内環境が悪化し、便秘や下痢を繰り返すことにつながる可能性があります。


お酒を飲むと下痢になりやすい人の特徴

同じ量のお酒を飲んでも、翌朝に下痢になる人とならない人がいるのはなぜでしょうか?実は、体質や生活習慣によって、お酒が腸に与える影響が異なるのです。

 

下痢になりやすい人の特徴

・腸が敏感な人(過敏性腸症候群の傾向がある)
ストレスや食事の変化で腸が過剰に反応しやすい人は、アルコールの刺激に対しても敏感。

・アルコール分解能力が低い人(お酒が弱い体質)
お酒に弱い人は、アルコールの代謝が遅く、アセトアルデヒドの影響を受けやすい。

・胃腸が弱い人(胃炎や腸の炎症がある)
もともと胃腸の調子が悪いと、アルコールによる刺激で症状が悪化しやすい。

・食事を摂らずにお酒を飲む人
空腹時の飲酒は胃腸へのダメージが大きく、消化不良や腸のトラブルを引き起こす原因になる。

このような体質や生活習慣がある人は、お酒を飲む際に注意しないと、翌朝のトイレで苦しむことになりやすいのです。


腸内細菌が乱れる?アルコールと腸内環境の関係

アルコールを飲むと腸内環境が変化し、腸内細菌のバランスが崩れることがあります。腸内には善玉菌・悪玉菌・日和見菌が存在しており、これらのバランスが保たれることで腸の健康が維持されています。しかし、アルコールの過剰摂取は腸内の善玉菌を減少させ、悪玉菌を増やす原因となるのです。

腸内細菌のバランス

ビールやワインなどの糖分を含むアルコール飲料は、悪玉菌の増殖を助け、腸内の発酵を促進することがあります。その結果、お腹が張ったり、ガスが溜まりやすくなったり、下痢がひどくなることがあります。さらに、腸内細菌のバランスが崩れると、腸のバリア機能が低下し、腸の炎症が起こりやすくなるため、慢性的な腸の不調につながることもあります。

腸内環境を守るためには、お酒を飲む際に発酵食品(ヨーグルト、納豆、キムチなど)を意識的に摂ることが重要です。また、飲酒後は水分をしっかり補給し、腸内のバランスを整えるために食物繊維を多く含む食品(野菜、海藻、豆類など)を摂ると良いでしょう。


アルコールの利尿作用と脱水が腸に与える影響

お酒を飲むとトイレが近くなると感じたことはありませんか?これは、アルコールに強い利尿作用があるためです。アルコールを摂取すると、腎臓が水分を再吸収する働きが抑制され、体内の水分が尿としてどんどん排出されてしまいます。その結果、脱水症状が起こり、腸の働きにも悪影響を及ぼすのです。

水分補給

腸が正常に機能するためには、十分な水分が必要です。しかし、お酒を飲んで体内の水分が減ると、腸内の水分バランスが崩れ、便が硬くなって便秘になったり、逆に腸が過剰に働いて下痢になったりすることがあります。特に、アルコールの影響で腸が刺激されている状態では、適切な水分が確保されていないと、さらに腸内環境が乱れてしまいます。

脱水による腸の不調を防ぐためのポイント

・お酒を飲むときは、水やお茶をこまめに飲むことを意識する(1杯のアルコールにつき1杯の水を飲むのが理想)
・アルコールの中でも特に利尿作用が強いビールやウイスキーを飲むときは、塩分を含む食べ物(味噌汁やスープ)を合わせて摂る
・飲酒後の寝る前にコップ1杯の水を飲むことで、翌朝の腸の負担を軽減できる

このように、アルコールによる脱水を防ぐことで、翌朝のトイレのトラブルを軽減することができます。なかなかすべてを実施することは難しいと思いますので、どれか一つでも毎回の飲み会の際に意識できるとよいでしょう。


飲みすぎると腸粘膜がダメージを受ける?腸の炎症との関係

アルコールは腸の粘膜に直接的なダメージを与えることが分かっています。特に、大量に飲酒すると、腸の内壁が炎症を起こし、腸のバリア機能が低下することがあります。

下痢や腹痛が頻繁に起こる

健康な腸では、腸壁が外部からの刺激や細菌の侵入を防ぐバリアの役割を果たしています。しかし、アルコールを過剰に摂取すると腸の粘膜が荒れ、このバリア機能が弱まるため、腸内の環境が不安定になります。その結果、食べ物の消化・吸収がうまくいかなくなり、下痢や腹痛が頻繁に起こるようになります。

腸の炎症

腸の炎症が進行すると、腸内の細菌が血流に漏れ出し、「リーキーガット症候群(腸漏れ症候群)」という状態を引き起こす可能性もあります。これは、腸のバリアが壊れることで、未消化の食べ物や毒素が血液中に流れ込み、免疫系の異常反応を引き起こす症状です。

腸粘膜のダメージを防ぐために

腸粘膜のダメージを防ぐためには、飲酒の頻度を見直し、腸を保護する食品を意識的に摂ることが重要です。特に、発酵食品(ヨーグルト、キムチ、納豆)、オメガ3脂肪酸を含む食品(青魚、亜麻仁油)、抗炎症作用のある野菜(ブロッコリー、トマト、にんじん)を日常的に取り入れることで、腸の回復をサポートすることができます。


アルコール分解で腸が疲れる?アセトアルデヒドの影響とは

お酒を飲んだ後、体内でアルコールが分解される過程で生じる「アセトアルデヒド」という物質が、腸の働きに悪影響を与えることが分かっています。

アセトアルデヒド

アセトアルデヒドは、肝臓でアルコールを分解する際に発生する毒性の強い物質で、二日酔いの原因にもなる成分です。このアセトアルデヒドが血液を介して腸に到達すると、腸の細胞を傷つけ、腸の炎症や過敏症を引き起こすことがあります。その結果、腸が正常に機能しなくなり、翌朝トイレに駆け込む必要があるのです。

アセトアルデヒドと腸内細菌

アセトアルデヒドは腸内細菌にも影響を与え、悪玉菌が増えやすい環境を作る可能性があります。腸内細菌のバランスが乱れることで、さらに便の状態が不安定になり、下痢と便秘を繰り返す原因になることもあります。


アセトアルデヒドの影響を軽減するためには、アルコールを分解しやすい栄養素を摂ることが大切です。特に、ビタミンB群(豚肉、卵、大豆)、抗酸化作用のあるビタミンC(柑橘類、パプリカ)、肝臓の解毒を助けるシステイン(玉ねぎ、にんにく)を意識的に摂ると、アルコールの分解がスムーズになります。


お酒の種類によって腸への負担は違う?下痢になりやすいお酒とそうでないお酒

お酒の種類によって、腸への影響が異なることをご存じでしょうか?アルコール度数や糖分の含有量によって、腸への負担が変わってきます。

下痢になりやすいお酒

  • ・ビール(炭酸が腸を刺激し、利尿作用も強い)
  • ・ワイン(酸が強く、腸内の悪玉菌を増やしやすい)
  • ・カクテル(糖分が多く、腸内細菌のバランスを崩しやすい)

腸に優しいお酒

  • ・焼酎(糖分が少なく、腸への刺激が比較的少ない)
  • ・ウイスキー(アルコール度数は高いが、飲み方次第で負担を軽減できる)
  • ・ハイボール(糖分が少なく、炭酸の刺激が控えめ)

腸の負担を減らしたい場合は、糖分の多いお酒を避け、できるだけシンプルな蒸留酒(焼酎やウイスキー)を選ぶと良いでしょう。


おつまみの選び方も重要!腸を守る食べ方とは?

お酒を飲むときに何を食べるかによって、翌朝の腸の調子が大きく変わることをご存じでしょうか?お酒そのものが腸に刺激を与えるだけでなく、飲酒時に食べる「おつまみ」も腸の状態に影響を与えます。特に、脂っこいものや刺激の強い食べ物は、消化器官に負担をかけ、アルコールと相まって腸の働きを乱す原因となります。

腸に優しいおつまみとは?

腸の負担を軽減し、アルコールによるダメージを和らげるためには、消化に良く、腸内環境を整えるおつまみを選ぶことが大切です。例えば、納豆やヨーグルト、キムチ、ぬか漬けなどの発酵食品は腸内の善玉菌を増やし、腸の働きを整えてくれます。また、食物繊維を多く含む野菜や海藻、きのこ類は、腸の調子を安定させるのに役立ちます。

一方で、唐揚げやポテトフライなどの揚げ物は、腸の負担を増やし、下痢や腹痛を引き起こす可能性があります。スパイシーな料理も腸を刺激しやすいため、翌朝のトイレを考えるなら控えた方が無難です。

飲酒時のおつまみを工夫することで、腸の健康を守りつつお酒を楽しむことができます。


二日酔いと下痢が同時に起こる理由とは?

お酒を飲んだ翌朝、「頭が痛い」「気持ち悪い」といった二日酔いの症状と、「お腹がゆるい」「下痢が止まらない」といった腸のトラブルが同時に起こることがあります。これは、アルコールの影響が腸だけでなく全身の水分バランスや代謝にも関わっているためです。

下痢や腹痛

アルコールを摂取すると、肝臓がアルコールを分解する過程で「アセトアルデヒド」という有害物質が発生します。このアセトアルデヒドは、血管を拡張させて頭痛を引き起こすだけでなく、腸にも悪影響を与えます。腸内の粘膜を刺激し、ぜん動運動を活発にしすぎることで、下痢や腹痛の原因になるのです。

アルコールの利尿作用によって体内の水分が排出されると、腸内の水分バランスが崩れ、便が硬くなったり、逆に水分を吸収しきれずに下痢になったりします。さらに、胃がアルコールの影響で荒れていると、食べたものがうまく消化されず、腸に負担をかけることになります。二日酔いと下痢の両方を防ぐためには、適切な水分補給と腸に優しい食事を心がけることが重要です。


腸を守るために飲酒後にできるケアとは?

お酒を飲んだ後の腸のダメージを最小限に抑えるためには、飲酒後のケアが重要です。特に、アルコールによって腸内の水分バランスが乱れているため、水分補給を意識することが大切です。

白湯や常温の水

飲酒後の水分補給には、白湯や常温の水が最適です。冷たい水を飲むと胃腸を刺激してしまうことがあるため、できるだけ温かいものを選ぶと良いでしょう。また、スポーツドリンクや味噌汁を摂ることで、失われた電解質を補うことができます。

消化に優しい食品

食事面では、消化に優しい食品を選びましょう。お粥や豆腐、スープなどは胃腸に負担をかけず、腸の回復を助けてくれます。さらに、ヨーグルトや納豆などの発酵食品を摂取することで、腸内細菌のバランスを整えることができます。

飲酒後に適切なケアを行うことで、翌日の腸の不調を防ぎ、健康的にお酒を楽しむことができます。


腸が悲鳴を上げているサイン!受診の目安と診療科

お酒を飲んだ翌朝に下痢になることは珍しくありませんが、頻繁に起こる場合や、症状が長引く場合は要注意です。アルコールによる一時的な腸の不調ではなく、腸の機能そのものが低下している可能性があるからです。特に、以下のような症状がある場合は、単なる「飲みすぎ」では済まされないことが多いため、早めに医療機関を受診することが重要です。

受診の目安となる症状

①飲酒後の下痢が1週間以上続く

通常、アルコールによる下痢は1〜2日で改善することが多い。しかし、1週間以上続く場合は、腸の粘膜に炎症が起きている可能性があり、腸の病気が疑われる。

②便に血が混じる、または黒っぽい便が出る

消化管からの出血の可能性があり、胃潰瘍や大腸ポリープ、大腸がんなどの病気のサインかもしれない。特に、黒っぽいタール状の便は、胃や十二指腸からの出血が原因となることが
多いため、すぐに医師の診察を受ける必要がある。

③激しい腹痛や膨満感が続く

腸が正常に機能していない可能性がある。胃腸炎や過敏性腸症候群(IBS)、潰瘍性大腸炎などの症状の可能性があるため、検査を受けることが望ましい。

④体重が急激に減少する

飲酒後の下痢が頻繁に起こり、食べても栄養が吸収されにくくなっている可能性がある。慢性的な腸の炎症や、吸収不良症候群、大腸がんなどの病気が潜んでいる可能性がある。

⑤発熱を伴う下痢がある

腸の炎症が進行し、細菌感染やウイルス感染を起こしている可能性がある。特に、アルコールと一緒に生ものを食べた場合は、食中毒の可能性も考えられる。

お酒を飲んだ翌朝にトイレに駆け込むのは、単なる「飲みすぎ」のせいではなく、腸が悲鳴を上げているサインかもしれません。アルコールが腸の蠕動運動を活発にしすぎたり、腸内細菌のバランスを崩したりすることで、下痢や腹痛を引き起こすことが分かっています。しかし、適切な飲み方やケアを心がけることで、お酒の影響を最小限に抑え、腸の健康を守ることができます。

お酒と上手に付き合うためのポイント

①お酒を飲むときは水を一緒に摂る(アルコールの利尿作用による脱水を防ぐ)
②空腹で飲まない(胃腸への負担を軽減するために、食事をとってから飲む)
③腸に優しいおつまみを選ぶ(発酵食品や食物繊維が豊富なものを摂る)
④飲酒後のケアをしっかり行う(白湯を飲む、消化に良い食事を摂る)
⑤下痢や腹痛が頻繁に起こる場合は医師に相談する(消化器内科で腸の状態をチェックする)

「お酒は楽しく飲みたいけど、翌朝のトイレはつらい…」そんな悩みを抱えている人は、お酒の飲み方を少し工夫するだけで、翌朝の不快感を軽減できる可能性があります。腸の健康を守ることは、全身の健康につながります。適切な飲み方を意識しながら、お酒と上手に付き合っていきましょう!


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当院では、下痢や便秘にお困りの方にも検査や治療のご相談を行います。大腸がんや腸炎などの可能性が疑われる場合には、内視鏡検査のご提案もいたします。まずは、外来のご予約のうえご来院ください。内視鏡検査を希望の場合には、事前診察外来(大腸カメラの事前の相談・説明外来)、当日大腸カメラ(1日で診察から検査まで対応)でのWeb予約も可能です。24時間web予約が可能です。

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